断熱塗料・遮熱塗料ガイド|自動車産業・工業製品向け

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目次

はじめに

本記事では、断熱塗料と遮熱塗料の基本的な特性、作用原理、およびそれぞれの塗料がどのようにして熱伝達を制御し、どのような状況で最適に機能するかについて詳しく解説します。また、これらの塗料の選択と適用において考慮すべき要因についても触れます。 この記事を通じて、読者の皆様が断熱塗料と遮熱塗料の概念を深く理解し、これらの製品の利点と限界をより明確に把握できるようになることを目指します。

熱伝達の原理

熱エネルギーは、伝導、対流、放射の3つの主要なメカニズムを通じて伝達されます。これらの熱伝達のメカニズムを理解することは、断熱塗料と遮熱塗料の効果的な使用と選択に非常に重要です。



熱伝導は、熱エネルギーが物体内を移動する現象を指します。物体の一部が加熱されると、分子や原子の振動を通じて物体中で伝わります。低熱伝導率材料の使用により、抑制できます。
対流による熱の移動は、熱が流体(通常は空気や液体)を介して運ばれるプロセスです。この原理は、例えばエンジンの油冷却システムや冷却ファンなどに応用されています。
放射による熱伝達は、物体が熱エネルギーを電磁波(主に赤外線)の形で放出する現象です。金属面などの高反射率素材によって、放射による熱伝達を抑制することができます。

断熱塗料と遮熱塗料の違い

断熱塗料と遮熱塗料の違いを理解することで、それぞれのメリットとデメリットを把握し、適切な使用方法と最大限の効果を得ることができます。

断熱塗料

断熱塗料は、熱源からの熱が被膜表面に伝わった際、内部への熱の拡散を抑制することに特化しています。この効果は、熱伝導率が低い特殊な材料、例えば中空粒子やシリカエアロゲルを塗料中に均一に分散させることで達成されます。これらの材料は熱が伝わりにくく、塗装された部品への熱流入を抑制し、温度上昇を防ぎます。特に中空粒子は、内部の空気層が熱伝導率を大幅に低下させる要因となります。ただし、放射熱による影響を抑制する効果は限られており、遮熱塗料との併用が必要な場合もあります。また、熱源の熱量が非常に大きい場合や、断続的に長期間高温にさらされると、断熱塗料の被膜が熱源の温度に近づき、結果として対象物の温度が熱源の温度に近づいてしまう可能性があります。

遮熱塗料

遮熱塗料は、輻射熱を遮断することに特化しており、必ずしも熱伝導率を低くする必要はありません。この塗料の主要な機能は、熱源からの輻射熱(赤外線)を塗膜表面で反射することです。この反射作用により、物体が高温になるのを防ぎ、また、熱源に塗装された場合は発生する輻射熱を抑制する効果もあり、周囲の温度上昇を防ぐことができます。この塗料は金属粒子などの赤外線反射率の高い素材を高濃度で分散されていることに特徴があります。特に、これらの粒子の均一な分散は非常に重要であり、分散が不均一だと赤外線の遮蔽効果が低下するだけでないく、密着性や耐久性にも影響します。

遮熱塗料の効果に関する計算分析:放射率と温度依存性の観点から

左下の図1では、熱源からの輻射熱をシュテファン・ボルツマンの法則に基づいて計算し、異なる放射率における温度依存性を示しています。この計算値から、放射率が高くなるにつれて放射熱流量が急激に増加することが分かります。また、熱源の放射率を低減することで、輻射熱の発生を抑制できることを示しています。これらから、部材の温度だけでなく、放射率も熱管理における重要な要因であることを示しています。

右下の図2では、放射率が0.4(酸化鉄に相当)の熱源と、対面する基板が配置された際の、基板が受ける放射熱流量の計算値を示しています。この計算値から、基板の放射率が低下すると、熱源から受ける熱流量が大幅に低下することが分かります。これらの分析は、放射率の違いが熱伝達に与える影響を示しており、特に遮熱材料や断熱材料の選択において重要な要素となります。低放射率の材料は熱放射を効果的に抑制し、エネルギー効率の向上に寄与することが期待されます。逆に、高放射率の材料は熱をより効率的に放出し、冷却を促進します。

(※基板側の温度は30℃で固定し、多重反射を考慮していますが、対流熱伝達や形態係数、などは考慮していません。また、波長依存性は全て同一のものと仮定しています。)

断熱塗料の効果に関する計算分析:厚みと熱伝導率の観点から

図3はフーリエの法則に基づいて計算された、熱源から基板への熱伝達時における熱伝導率と温度差の影響を示しています。熱伝導率が低いほど熱流量も小さくなることがわかります。基板への熱伝達を減少させるためには、基板自体の熱伝導率を低くするか、断熱層を設けることが効果的であると理解できます。

図4では、基板の厚みを変えた時の熱流量への影響を計算しています。基板の熱伝導率を下げることも有効ですが、厚みが非常に大きな影響を及ぼすことも明らかです。
(実際には、基板の熱伝導率や厚みを変更することは難しいと考えられます。しかし、基板に断熱塗料を適切な膜厚で塗布することにより、熱流量をコントロールすることが可能です。)

このことから、基板(断熱層)の熱伝導率を下げ、可能な限り厚みを大きくすることが重要であると結論付けることができます。



※ここでは、基板温度を固定し、放射熱伝達と対流熱伝達の影響を無視しています。

まとめ

本記事では、断熱塗料と遮熱塗料の基本特性、作用原理、およびそれぞれの塗料が熱伝達を制御する方法について詳しく掘り下げました。熱伝達の三つのメカニズム(伝導、対流、放射)の理解が、これらの塗料の適切な選択と利用に不可欠であることを明らかにしました。断熱塗料は内部への熱拡散を抑制し、遮熱塗料は放射熱を反射することで熱伝達をコントロールします。また、計算分析を通じて、これらの塗料の効果的な使用における放射率や厚みなどの要因の重要性を示しました。この知識を活用することで、熱管理戦略のお役に立てれば幸いです。

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