PFAS規制について|基礎と川邑研究所の取り組み

PFASとは
PFASは有機フッ素化合物(ペル&ポリフルオロアルキル化合物)の総称で、その数は1万種類を超えると言われています。 フッ素の持つ特性を生かした多種多様な化合物が存在し、以下のようなものに使用されています。- フッ素ポリマー :
高い化学的安定性を持つため、様々な工業製品や医療機器に利用されています。 - フッ素ゴム:
耐熱性や耐薬品性、耐油性、耐候性に優れるため、シール材としても非常に優秀な物質です。フッ素ゴム製のシールリングは自動車などに使われています。 - フッ素オイル:
耐熱性、安定性があり、無色・無臭の優秀な潤滑油です。 ごく少量で効果を発揮し、蒸発して減ることもないため長寿命な潤滑材です。 - フッ素溶媒:
化学反応の媒体として、または洗浄剤として多く用いられています。洗浄力が非常に高く、精密機器の洗浄に用いられます。 - フロンガス:
蒸発が早いため、かつてはエアゾール用の噴射ガスとして多く使われていました。現在は冷媒として広く使用されています。 - フッ素系界面活性剤:
界面活性剤とは、主に水と油をなじませるための橋渡しとなる材料です。フッ素が結合した界面活性剤は汎用性が広く優秀で、添加剤として様々な分野で使用されています。
特定フロンと特定PFAS
広く使われるようになったPFASですが、そのごく一部は環境に悪影響を及ぼしていることがわかりました。今から50年ほど前、冷媒やエアゾールの噴射剤として広く使われていたクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)がオゾン層を破壊していることが発覚しました。環境に悪影響を及ぼすのはフロンガスの一部のみであるため、CFCとHCFCを特定フロンと呼称し、現在では使用が禁止されています。
次に疑惑の対象となったのはPFOSとPFOAです。優秀な界面活性剤であるPFOSとPFOAは、防水スプレーや消火剤、そして塗料やインクの添加剤など、多くの用途に使われていました。これらは生物の血液に侵入し蓄積する性質があり、発がん性や生殖毒性のリスクをもたらす可能性があることが示されました。また、分解するまでに長い時間がかかるため、より長く生物への影響が続く可能性があります。類似物質のPFHxSなども同様の性質を持つと考えられており、これらは特定PFASと呼ばれ、現在は使用が禁止されています。
冒頭で述べた「川の水や土壌から検出されているPFAS」はこの特定PFASを指しています。消火剤や防水スプレーとして使われていた背景から、広く大気中に散布されたため、いまでも土壌中から検出され続けているのです。
PFAS規制
特定フロンや特定PFASの有害性が明らかになったことで、EUをはじめとする地域で、PFAS全体の規制に向けた動きが加速しています。予防的に全ての有機フッ素化合物を規制すべきであるという考え方です。しかし、すべてのPFASを一律に規制することは、慎重な検討が必要だと考えています。PFASは、その独特な化学的性質から工業、医療、そして私たちの生活の中で重要な役割を果たしてきました。独特過ぎるがゆえに、簡単に代替物質が見いだせないのが現実です。また、PFASによって実現した環境保護も多数あります。PFAS規制を加速させることで起きうる弊害について全容を把握できていない状況での規制強行は、多くの問題を生み出す可能性があります。
PFASと環境保護
PFASの中でも特にフッ素ポリマーやフッ素ゴムなどは、その特異な化学的性質によって、環境負荷を軽減し、持続可能な発展に寄与している例が多数存在します。具体的な貢献例を挙げてみます。- 医療用途への貢献:
フッ素ポリマーは、薬品に侵されず、生物体内で分解されない安定性を持ちます。これにより、医療器具やインプラントなど、直接人体に影響を及ぼす用途に安全に使用されています。 - マイクロプラスチック問題の解決策:
永遠の物質とも呼ばれるフッ素ポリマーは日光や雨風にさらされても劣化しないため、他のプラスチックに代わって使用することで、マイクロプラスチックの発生を抑制できます。 - エネルギーと資源の節約:
フッ素ポリマーを潤滑材として使用することで、油の使用量を減らし、機械の寿命を延ばし、効率を向上させることができます。これは、資源の節約やCO2排出の削減に直結します。フッ素ポリマー潤滑は医療機器、自動車、工業機械などにも多く使用され、それらの安定性を高める役目を担っています。 - 自動車産業や工業分野への貢献:
耐熱性、耐薬品性、耐油性に優れたフッ素ゴムは、自動車部品や工業製品に広く使用されており、その長寿命性により製品の交換頻度を減らし、廃棄物の削減に寄与しています。 - 建築物の保護と資源の節約:
紫外線や腐食に強いフッ素樹脂塗料は、建造物の耐久性を高め、メンテナンスの頻度を減らすことができます。これにより、長期的な資源節約に繋がります。
これらの用途に使われているPFASは残念ながら現在の技術において代替物質がありません。PFASを規制することは、少し不便な生活に後戻りするだけに留まらず、環境保護の取り組みを後退させる要因ともなり得ることを理解しておかなければなりません。PFASの有害性や環境への影響については、科学的な根拠に基づいて慎重に評価し、必要に応じて特定のPFASに対する規制を検討することが重要です。
弊社の取り組み
PFASについて、私たちは慎重な判断を願っていますが、同時に代替技術の開発にも積極的に取り組んでいます。PFASが規制されるべきか否かとは別問題として、PFASと同等の性能を持つ製品を開発することは、持続可能な未来の選択肢を増やすことであり、重要な課題だと考えています。用途によっては、PFAS含有製品よりも優れた性能を持つ開発品ができています。特定PFASを含む、有害と判断されたPFASを含有する既製品については、順次、代替製品を用意しており、今後も速やかな対応を進めます。お客様のニーズに応え、常に新しい技術を生み出すべく、研究を継続していきます。
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